本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

今日の自由詠

パンの耳だけでお腹を満たしても羽ばたける日が来ると信じた

 第19回若山牧水青春短歌大賞で佳作に選んでいただいたのは

「ください」と言えなくなったパンの耳ずるい大人になってしまった

という歌だったのだけど、私が子供の頃、よく、近所にあるしょうき庵というお菓子とパンの店で、食パン2斤分くらいになる量の食パンの耳を20円くらいの激安価格で買っていた。それが、父が職を転々としたり入退院を繰り返したりしていつも貧しい我が家では、貴重な食糧だった。
 でも、私は、家が貧乏であっても、自分の可能性というものを決して諦めなかったし、いつも、夢を見ていた。必ず、東京に行って夢を叶えるんだと思っていた。
 その夢は、時には、ミュージカル女優だったり、アナウンサーだったり、脚本家だったり、コロコロ変わったけれど、どれも、東京で叶えたい夢だった。
 今は、東京に来たからといって夢を叶えられる人はほんの一握りだということはわかっているし、身の丈に合わない大きな夢を見ることはなくなって、どんなにお金がない時もパン屋さんに
「パンの耳をください」
なんて言えなくなってしまって、それは、自分が、ちっぽけな人間になってしまったということなのではないだろうかと悩んだりすることもある。
 あの頃の根拠なき自信に溢れていた頃の私に戻れたら、夢にも近付けるだろうか。
 まずは、近所でパンの耳を入手できそうなパン屋さん探しから始めてみようか。