本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日の100人の短歌・第5グループ⑦甘酢あんかけさん

 甘酢あんかけさんは、ライターさんで、コピーも作られていて、短歌以外にも、読売広告大賞を受賞されたりしていらっしゃるそうなんだけど、短歌でもとてもご活躍で、なんと、NHK短歌で一席、二席、三席に入選されたことのある方です。すごすぎる。筆名も、うたの日では甘酢あんかけさんですが、甘酢、友常甘酢と、知ってるだけで3つ使い分けていらっしゃいます。
 そんな甘酢あんかけさんのうたの日のお歌は、一首の中に単語がいっぱい詰まっていて、まるで、テレビドラマや映画やアニメを観ているかのように、状況がパッとイメージできるお歌が多い印象です。そして、その内容がとても面白いのです。
 今回は、そんな甘酢あんかけ劇場の中から2本をお楽しみください。


幼子が千利休の面持ちでホットカルピス飲んでうなづく/甘酢あんかけ 2017年12月5日お題「利」


 このお題で、千利休を選ぶところまでは他の人とも被るかもしれないけれど、飲み物がお茶ではなくホットカルピス、飲むのは幼子というのがとてもいいなと思います。
 作者である甘酢あんかけさんも、幼子を見ている主体も、読者も、誰ひとりとして千利休がどんな顔でお茶を飲んでいたかなんて知らないはずなんだけど、千利休の面持ちというと、ただ美味しそうに飲むだけではなく、静かにじっくり味わって、渋い雰囲気すら漂っているのではないかと想像できます。それが、甘いカルピスであるというのがギャップがあって可愛いし、冷たいカルピスであればごくごく一気に飲み干してしまうから千利休の例えもピンとこないと思うのだけど、ホットカルピスだからぴったりだったのでしょう。
 ホットカルピスを飲むたびに思い出すお歌になりそうです。


(ママだって実はカートに片足を乗せてシューンと滑走したい)/甘酢あんかけ 2019年1月10日お題「スーパー」


 思わず、声に出して笑ってしまいました。育児をしているママである主体の本音を詠んだお歌です。
 「スーパー」というお題で、商品やレジなどを詠み込むのではなく、カートを詠み込んだというのもさすがだなあと思いますし、スーパーにこんなママがいたらと思うと、道徳的にはいけないことなんだけど可笑しくて可愛くて、ついつい笑顔になってしまうのです。「シューン」というオノマトペも声に出して読んだときに気持ちがいいですし、( )の使い方のお手本のようなお歌だと思います。
 ママだから、我慢していること、主体にはたぶんいろいろあるのかもしれない。でも、子供のためにもいいママでいなければと懸命に生きている人なのではないだろうかと思うし、だからこそ、この本音がキラキラ輝いて見えるのだと思います。