うたの日の100人の短歌・第5グループ⑥友漓ゆりりさん
友漓ゆりりさんの筆名の苗字はともながと読むそうです。まだ、高校生なんですけど、短歌も俳句も作られていて、数々の公募で入賞や入選されています。
特に、私がいちばん欲しいと思いながらも3年連続箸にも棒にもかからない結果の河野裕子短歌賞。ゆりりさんは、なんと今年、第8回河野裕子短歌賞 青春の歌部門にて、
湿らせた背を触れさせるオットセイ きみの「またね」が始まりだった
/友漓ゆりり
というお歌で産経新聞社賞(準大賞)を受賞されました。めっちゃ、羨ましい!!これからのご活躍がますます楽しみです。
うたの日では出詠数は少ない方なんですが、独特な、ゆりりさんの感性でしか詠めないだろうと思うようなお歌の中で、特に、このお歌が心に残りました。
控えめな咳を覚えて本来の少女としての薄い脱け殻/友漓ゆりり 2019年7月18日お題「控」
主体は作者のゆりりさんくらいの年頃の、少女から大人になろうとしている妙齢の女性でしょうか。
控えめな咳を覚えたことが大人の女性への第一歩として捉えられているのがとても面白いです。控えめな咳をする場面。例えば、映画や舞台を観に行った時など、周囲を気遣ってできるだけ小さく咳をすることは、まだ、子供のうちは難しいでしょう。でも、主体は、もう、そういう気遣いのできる人になったのだろうと思います。
そして、主体自身も、自分はもう少女とは呼べない年齢になったのだと自覚していて、これまで周囲のことは考えずに咳をしていた自分が、今となってはセミが脱皮した後の脱け殻のように思えるのでしょう。
セミの観察のように、客観的に、少女としての自分と今の自分との違いを表現しているところがいいなあと思うお歌です。