本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日の100人の短歌・第7グループ③あまがっぱさん

 あまがっぱさんは、私と住んでいるところが近いので、何回か近所でお会いしています。文章を手書きされるのが好きな方で、その内容によって筆記用具も変えたりされるこだわりがあり、短歌も、手書きすることを想定して詠まれているといいます。私の歌も何度か彼女の美しい手書きで書いていただいたことがあって、不思議と、自分の歌がもっといい歌に見えるような気がしてありがたかったです。もしも、あまがっぱさんがネットプリントや歌集を出される際も、手書きのものにされるといいなあなんて思っています。
 あまがっぱさんのお歌は、歌意のわかりやすい素直なお歌が多いです。そして、うたの日で読んだ時には♪も投票しなかったんだけど、後で手書きされているのを読むと、ああ、こんなにいいお歌だったのか!と気づかされることも多々あります。
 今日引くお歌も、きっと、手書きだったらもっと好きになれるお歌かもしれません。


ドア越しに聴いた寝息が健やかで重い疲れは空気に溶けた/あまがっぱ 2018年11月18日お題「ドア」


 主体には、一緒に暮らしている家族、または恋人がいるのでしょう。仕事に疲れきって帰宅したら、ドア越しに一緒に暮らしている人の寝息が聴こえてきて、主体の重い疲れは空気に溶けるようになくなってしまったという歌意だと思います。
 寝息が健やかというところを見ると、ひょっとすると、一緒に暮らしている人は、何かの病気なのかもしれません。でも、主体には仕事があるからつきっきりで看病することはできず、後ろ髪を引かれるような思いで玄関を出てゆく。帰宅すると、寝息が健やかでよく眠れているようでホッとして、それまでの仕事の疲れや心配もすべて空気に溶けたと思えるくらいに消えたのではないでしょうか。
 自分も重い疲れを感じるほど大変なのに、誰よりも一緒に暮らしている人の健康を気にかけているのが伝わってくる、とても優しいお歌だと思います。