本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

第2回 ベストヒットおとの日♪・8 矢留さん

 8番目は矢留さんです。やどめさんと読みます。矢留さんのおとの日のお歌は9首ありましたので、次の1首をご紹介します。


これはたぶん冬の乾いたさみしさにアロンアルファでくっつけた恋/矢留

 2022年2月6日・お題「接着剤」



 すごく皮膚感覚を刺激するようなお歌だと思います。

 まず、寒い冬に恋人のいない人は、クリスマスや年越しやお正月などのイベントも多い分、他の季節よりもさみしさを感じやすくて、人肌が恋しいなんていう表現もよく使われる季節で、慌てて恋をしなければならないような気持ちになることもあると思います。このお歌の主体がまさにそういう状態です。「冬の乾いたさみしさ」という表現が、冬の乾燥した空気と主体のカサカサした心の両方を表現していてとてもいいなと思います。

 そして、お題の「接着剤」であるアロンアルファが登場するのですが、皆さんはアロンアルファを使っている時に、うっかり指と指がくっついた経験はあるでしょうか。私は数年に1回くらいやってしまうのですが、あれは無理に力を入れて引っ張って離そうとするとすごく痛いし皮が剥けてしまったりすることがあるので、お湯の中に指を入れて、揉むようにしてゆっくり剥がさなくてはいけません。この主体は、冬にさみしかったから手っ取り早く恋をしたのだと思いますが、それを「アロンアルファでくっつけた」としたところがとてもイメージしやすくて、無理矢理強力な接着力のアロンアルファでくっつけるように恋をしてみたけれど、それを後悔して離れたいと思った時には痛みを伴うことが伝わってきます。

 心が乾いているうえに痛みを感じる恋をお題を上手に活かして詠まれていると思いました。せつなさも虚しさも感じるお歌でした。