本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日の100人の短歌・第8グループ①鴨衣さん

 鴨衣さんとはTwitterで相互フォローではあるけれど、あまり絡みがなくて、鴨衣さんご自身のことはそんなによく知らないのです。今も違うハンドルネームでTwitterにいらっしゃるので、一瞬、どこにいらっしゃるかわかりませんでした。ごめんなさい。
 うたの日デビューは2018年、短歌結社・塔に羽原はるさんという筆名で所属されているということ以外はほとんど情報がないので、純粋に短歌だけを読むことができたように思います。

 特に、私が好きなお歌がこちらです。

あの人の光るピアスに憧れて眼鏡のネジを毎夜磨いた/鴨衣 2018年9月10日・お題「自由詠」

 うたの日はほぼ毎日題詠(というよりテーマ詠)なのだけど、毎月10日だけは自由詠の日で、自由詠が苦手な私なんかはとても苦労しているんだけれど、その分、他の人たちの素敵な自由詠を読めるのは大きな喜びのひとつです。
 このお歌では主体の性別もあの人の性別も読み取ることはできないし、あの人が友達なのか、恋愛対象なのか、先輩なのかもよくわからないんだけど、あの人が光るピアスをつけているということと、主体が眼鏡をかけているということはわかります。
 面白いのが、あの人自身に憧れているわけではなく、あの人の光るピアスに憧れているというところです。でも、主体は、あの人の真似をして自分もピアスをつけようとはしないのです。耳に穴を開けることが
怖いのか、ご両親の教育方針でピアスは禁止されているのか、ピアスのできない理由が何かあるんだろうけれど、そのかわりに、あの人のピアスのように眼鏡のネジを磨くのです。それも、毎夜。私も眼鏡をかけているのでわかるのですが、言われてみれば、眼鏡の小さなネジは、ピアスともよく似ていますし、目と耳の距離は近いので、眼鏡のネジが光っていればピアスっぽさもないとはいえないです。
 自分のしたいことができないという不自由さを不満に思うのではなく、そのかわりになることを見つけて満足している主体の心も、あの人のピアスや眼鏡のネジ以上にキラリと光っているように見えたのでした。