本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日の100人の短歌・第9グループ④ほのふわりさん

 ほのふわりさんは、うたの日歴が短歌歴ということでまだ短歌を始められて1年と数ヶ月しか経っていないのだけど、首席率も高めだし、秀歌もあるし、評も積極的に書かれている方です。なんといっても、ほのふわりという、ふわっとした感じのオノマトペっぽい言葉を筆名にされているところに並々ならぬセンスを感じます。
 そんなほのふわりさんのお歌で特に好きだったのがこちらの1首です。



君の差す傘は意外と派手だった 君には僕じゃないと気づいた/ほのふわり 2019年7月30日・お題「派手」


 まず、このお題で、雨の日にしか差さない傘を詠み込もうと選んだところがすごいと思うのですが、君が傘を差すのを主体が初めて見たと思わせる内容なので、おそらく、君は、まだ付き合って間もない恋人なのだろうと思います。普段の君の服装が落ち着いた感じの服装が多いのか、主体には、君の傘が派手であることが意外だったのでしょう。おしゃれな人にはわりとよくあることですが、服をモノトーンのものにしてバッグだけ赤にするとか、インパクトのある小物使いをする人はけっこういますので、君もそんなひとりだったのかもしれません。
 一字空けで主体がハッとしたんだろうなというのが伝わるのもすごいですし、下の句、これ、一歩間違えば主体がすごく嫌な人のように見えてしまうのを見事に回避しています。もしも、君と僕の位置が逆で、

僕には君じゃないと気づいた

だったとしたら、主体は一体何様のつもりなのだろうか?と思うくらい性格が悪く見えてしまうのです。だけど、この主体は違う。君には僕じゃないと気づいたんです。
 たぶん、主体はあまり自分の容姿に自信が持てないタイプの人なのではないでしょうか。洋服も全身ユニクロでも構わないような、あまり目立たないようにしているタイプ。主体が君とお付き合いしようと思ったのは、そんな自分と君が似ているんじゃないかと思ったからなのかなという気がします。似た者同士なら恋愛も上手くゆくだろうと考えて付き合い始めたけど、たった1本の派手な傘を見ただけで、主体は再び自信をなくしてしまったのでしょう。
 このお歌で、派手な傘はふたりの関係を壊してしまうほどの小道具でもあるのだけれど、実は、本当の主役は派手な傘だったんだなと感じたお歌でした。