本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日の100人の短歌・第9グループ⑥粗目雪さん

 大変長らくお待たせしてしまいまして、申し訳ありませんでした。
 今日紹介するのは粗目雪さんのお歌です。粗目雪さんも、筆名が既にもう詩のようで素敵だなと思う方です。お味噌を手作りされたりしていて、丁寧な暮らしをされているなという印象があるのですが、短歌にもそんな丁寧な描写が光ります。特に好きだったのはこちらのお歌です。


ひと回り大きな鉢に植え替える好きでいるのは骨が折れるね/粗目雪 2020年6月29日・お題「骨」

 
 「骨」というお題でこんな恋のお歌が読めるとは思っていなかったので、意外性がありました。
 私は、植物をちゃんと育てたことのない人なので、このお歌を読んで、そうか、植物が育ってくると、途中で大きな鉢に植え替える必要があるのか!と、何となく知識としては知っていても今まで意識したことがなくてぼんやりしていた手間について初めて意識させられたんですけど、きっと、植物を好きな主体にとっては、これはどんなに大変でも当たり前にやっていることなんだと思いました。
 植物だけに限らず、主体は、自分の好きなことや自分の好きな人に対しても、骨が折れるなと感じながらも、しっかり細やかな愛情を注ぐことができる人なのでしょう。
 そして、きっと、主体が丁寧に愛した物や人は、そんな主体を裏切らないんだと思います。だからこそ、骨が折れるとわかってはいても、その後に訪れる幸せを信じて最後までやり遂げることができる。
 これが、好きでいることの喜びだけを表現したお歌だったらちょっと嘘っぽいというか、共感できない人もけっこういる気がするんだけど、好きでいることの苦労の部分を植木鉢の具体を上手く使って表現したことや、結句で骨が折れるねと呼びかけたことで、読者も、うんうん!そうだよね!と頷ける、リアリティーのある恋のお歌になっているのだなと感じました。