本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日の100人の短歌・第10グループ⑩ののさん

 この企画を始めようと思った時に、最後の100人目は、うたの日の管理人さんであるののさんのお歌にしようと決めていました。
 たぶん、ののさんがうたの日というサイトを作ってくださっていなかったら、私が短歌を始めるきっかけもなかったと思うし、もし、自己流で始めていてもこんなに長い間ほぼ毎日続けることはできなかったと思うんです。
 ののさんは、ほとんどプライベートが謎に包まれている方だけど、きっと、お仕事もすごく忙しいのだろうし、うたの日に広告が出ないということは、ののさんがいくらかお金を出してくださっているんじゃないだろうかとも思うし、何よりも、毎日お題を出し続けてくださって、ちょこちょこ楽しいイベント的なことも企画してくださって、それは、ののさんにとても悲しいことや大変なことが起きてしまった時にも変わらずに続けてくださっていることを思うと、感謝しかありません。毎日ありがとうございます。これからもうたの日が、ずっと続きますように。でも、ののさんが無理をしすぎませんように。



小林幸子(さっちゃん)の衣装を見ると爺(じっ)ちゃんは戦艦陸奥の話をします/のの 2015年12月27日・お題「ドレス」


 紅白歌合戦から、それまでは毎年の名物だった白組美川憲一さんと紅組小林幸子さんの衣装対決がなくなってしまって何年経ったでしょう。歌う曲が『さそり座の女』や『おもいで酒』ばかりだとしても、あの衣装対決を観るのはその年最後の楽しみだったように思います。
 小林幸子さんの衣装はだんだん派手に巨大化していって、よく我が家では母と
「あれは衣装というより大道具のセットだね」
なんて話したものですが、このお歌の主体のお祖父様である爺ちゃんは、そんな小林幸子さんの衣装を見るたびに戦艦陸奥を思い出して話をされるというのです。
 
 大日本帝国海軍の象徴であったとも言われている戦艦陸奥は、小林幸子さんの衣装のように巨大で、立派な戦艦だったのでしょう。それをご存じのお祖父様も戦前戦中戦後を生き抜いて来られたということでもあります。
 戦時中は音楽は軍歌ばかりが流れていた日本で、現代は歌手がいろんな歌を歌い、戦時中は贅沢は敵だと言われて女性はもんぺ姿だったけど、紅白歌合戦では誰もが色とりどりの華やかな衣装に身を包むようになりました。そんな大晦日に、小林幸子さんの衣装を見ては戦艦陸奥の話を孫にしたくなるくらいにまで、お祖父様の戦争で負った心の傷も回復されたということなのかもしれません。
 
 もう、戦争を体験したことのある世代の人たちもだんだんと減ってゆき、戦争についての話を聴く機会も少なくなってきました。戦争を知らない私たちが戦争を二度と繰り返すことのないように自分の祖父母などから聴いた話をこうして短歌という形で残すことには、とても大きな意味があるように思うのです。

 本当は重い事実も詠まれているお歌なのに、さっちゃん、じっちゃんとルビを振ることで重くなりすぎないようにバランスを取っているところもとても素晴らしいと思いました。