本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

第2回 ベストヒットおとの日♪・10 南雲ゆゆさん

 本日の最後のお歌は南雲ゆゆさんのお歌です。南雲さんには5首のおとの日のお歌があったので、1首ご紹介します。


スランプを自覚するほどスランプでなかった時期が見つかりません/南雲ゆゆ

 2022年3月19日・お題「スランプ」


 易しい言葉で子供でも意味がわかりそうなお歌なんですけど、とても深い内容で思わず頷きました。

 スランプって、一時的に調子が悪くなることをいいますが、それって、好調な時もあるからこそ今の自分はスランプだなと気付けるんですよね。日常的に不調な人は、それが当たり前になっていて自分が不調だからといってスランプだとは思わないのかもしれません。

 これは笑い話なんですが、たまにバブル景気の頃の日本の話になると、当時の自分がどれだけお金持ちだったのかを語る人がいるんですけど、私の父は友人の借金の連帯保証人になってしまっていたので、我が家はずっと貧乏だったんです。だからバブル景気も実感したことがないし、バブルが弾けてからもずっと貧乏で、貧乏じゃなかった時期がありませんでした。しかも、それが普通だと思ってました。

 もしかしたら、スランプというのも似たようなもので、それまでずっとスランプであるのが普通でその状況を受け入れていた人が、
「私、今スランプなんだよね」
と言っている日頃は好調に見える人を目撃してしまった時、初めて自分の状態はスランプだったのかと気付けるものなのかもしれません。

 でも、「スランプでなかった時期が見つからない」という自覚のある人は、実は、すごく強い人なのだと思うし、いくらでものびしろがあるということでもあると思うので、いつかきっとスランプを抜け出せる明るい予感もあるお歌だと思います。