本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

第3回 ベストヒットおとの日♪・15 三冬つくしさん

 三冬つくしさんのお歌はおとの日が7首でしたので、1首ご紹介します。


運命はどこでさぼっているのだろう言ってくれたら迎えに行くが/三冬つくし

 2022年1月5日・お題「どこ」


 その言葉自体があまりにも美しすぎたり、カッコよすぎたりすると、短歌にした時にその言葉だけが浮いてしまったり、その言葉に負けないように他の部分も目立つ言葉を多用したら全体的にやりすぎた印象になってしまうこともあります。例えば、「光」とかはそうなってしまいがちな、つい使ってみたくなるけど難しい言葉だと私は感じているのですが、このお歌の冒頭の「運命」も、その言葉自体がとても力強くカッコいいけど、簡単ではない言葉だと思います。

 でも、このお歌は、「運命」という存在感の強い言葉を詠み込んでいるのに、すごく軽やかな読後感でとても好きでした。その軽やかさの理由について考えてみました。

 まずは、「運命」を擬人化し、しかも、「さぼっている」という怠け者の人格を与えたところがとても面白いです。これで、「運命」という言葉の持つ厳かなイメージを崩すことに成功していると思います。しかも、「言ってくれたら」と運命がしゃべる設定なのもすごくユニークです。

 そして、結句の選択が絶妙だと思います。凡人は、「運命」という言葉に続く動詞として「待つ」と受け身になってみたり、「切り拓く」と力強くなりすぎてしまったりしがちだと思うんですが、この主体は「迎えに行く」ととても優しく「運命」に歩み寄っています。こんな主体の気持ちを知ったら、「運命」もさぼっている自分を反省して主体のもとにすぐに駆けつけるのではないでしょうか。

 短歌というのは全体的なバランスというのがいかに大切なのか学べる、教科書のようなお歌だと思いました。