本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

第4回 ベストヒットおとの日♪・18 あきやまさん

 あきやまさんのおとの日のお歌はカウントした時点で47首ありましたので、3首引きます。

 

色づきを競う秋からいち抜けて冬をはじめたコンビニおでん/あきやま

 2020年10月29日・お題「抜」

 

 おでんの特徴を的確に捉えて擬人化されていて素晴らしいなと思いました。

 

 以前、『プレバト!』の色鉛筆アートのスペシャルで、1位に選ばれた人は、俺の株式会社さんの経営している飲食店のメニューの表紙を飾ることができるという回があって、具がいろいろあるから描きやすそうという理由で『おでん 俺のだし』さんを選んだ辻元舞さんが、いざ実物を見てみたらおでんの具はみんな茶色で難しかったとおっしゃってたんですけど、このお歌の上の句は、まさに、そんなおでんの見た目を言葉で表現されていると思います。

 

 また、このお歌の場合には、コンビニの具体的な店名は詠み込まないことで、読者それぞれの好きなコンビニのおでんを思い浮かべることができるのもいいなと思いました。

 

 

はぐれたらお菓子売り場で見つけてた君がいつかは手を引くのだろう/あきやま

 2021年2月2日・お題「~拝啓二十五の君へ~」

 

 とても温かい家族詠だと思います。

 

 幼い子が親とはぐれて迷子になるのはよくあることですが、スーパーならお菓子売り場、デパートならおもちゃ売り場に目が釘付けになっていたということ、自分が小さい頃にもあったなと思い出しました。

 

 主体のお子さんも小さな頃にはよくはぐれてお菓子売り場にいたけれど、今はもう少し大きくなって迷子は卒業したのでしょう。子供の成長の早さを主体はすごく感じていて、君が大人になって、自分がてを引かれる老人になる未来まで想像しています。君がそうしてくれるだろうと思えるのは、きっと主体自身も主体の親御さんが年老いたら手を引くのが自然だと思っているからなのではないでしょうか。

 

 親子の愛情は、脈々と受け継がれてゆくものなのだなあと思いました。

 

 

逆風をいくつも越えてきた母の風紋のごと美しい皺/あきやま

 2022年6月24日・お題「美」

 

 「美」というお題のお歌なのですが、まずどこから作られたのかが気になりました。風紋を美しいと思っているから浮かんだお歌なのか、それとも、お母様の皺を美しいと思っているから浮かんだお歌なのか。どちらにしてもとてもきれいなお歌だと思います。

 

 私は不勉強で、風紋という言葉を知ったのは初めてだったんですけど、鳥取県のHPによると、別名「砂のさざ波」とも言われる波状の縞模様のことだそうで、よく砂丘の写真についてるあの模様か!とわかりました。

 

 風で砂丘に風紋ができるみたいに、人生に逆風が吹くたびに苦労をされて乗り越えられてきたお母様の皺に、主体は美しさを見出だしているのです。そこから、お母様に対する深い敬意も感謝もすごくよく伝わってきますし、主体=あきやまさんなのだとしたら、息子が年老いた母の美しさを素直に褒めることができるのはとても素敵なことだと思います。きっと、主体自身も、お母様からたくさん褒められて育ったのではないかという想像も広がりました。