本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

第1回 ベストヒットおとの日♪・1 はつきむさん

 今日から毎月5の倍数の日にTwitterのスペースの機能を使って、私がインターネット歌会・『うたの日』のおとの日の短歌が100回になった記念の企画『ベストヒットおとの日♪』を開催することになり、早速、第1回目を終了することができました。
 原稿があるにもかかわらず拙い喋りで申し訳なかったのですが、お聴きくださってありがとうございました。

 こちらのブログにも、ご紹介した短歌と感想を載せてゆきますので、よろしくお願いします。


1 はつきむさん

愛を知り人間よりも人間で家族に溶ける胴長の犬/はつきむ
  2022年3月14日・お題「犬」

 すごく気になるところの多いお歌だと思いました。

 まず、初句の「愛を知り」から見ていきますが、仔犬の頃からずっとペットとして可愛がられている犬であれば、わざわざ「愛を知り」と伝える必要がないと思うので、この犬は、ひょっとしたら、かつては飼い主に虐待されていたり、捨てられていたり、保健所で殺処分される寸前だったり、一度は人間の愛を信じることができなくなったことのある犬なのではないだろうかと思いました。

 二句から三句の「人間よりも人間で」という表現はすごく不思議でユニークだと思います。愛を知って人間よりも人間らしくなったということは、愛を知る前のこの犬は一体どんな犬だったのだろうという想像も膨らみます。もしかすると、すごく人間を怖れておどおどしているような、遠慮がちな犬だったのかもしれない。それが今では人間よりも人間らしく振る舞っているというのです。

 四句の「家族に溶ける」という表現もちょっと不思議な表現です。普通なら、溶け込むと表現すると思うんですけど、この犬は溶け込むどころじゃなくて溶けちゃったということなんですよね。それくらい、すっかり主体の家族の一員だと犬本人も主体のご一家も思っているのでしょう。

 結句の胴長の犬という終わり方も、胴長の犬として思い浮かべるミニチュアダックスだったりしたら結句としても字余りではあるけどそんなに気にならないので犬種を書く場合もあると思うのですが、敢えて犬種を書いていないということは、胴長の犬ではあるけど犬種のわからない犬なのかもしれないし、主体にとっては犬種なんてどうでもよくて、犬のいちばんのチャームポイントだと思うところが胴長のところなのかなと感じました。

 この犬の出会えた飼い主が主体のような人で本当によかったなと思えたお歌でした。


 

 この感想をお伝えした後、はつきむさんからご連絡があり、この犬は虐待されて捨てられていた犬であったことを教えていただきました。はつきむさんたちが大切に愛情深く育てる中で、毛並みの艶々した美しい犬になったとのことでした。